今の時代は、とっても難しい病気、いわゆる難病・奇病と言われる病気の情報が、スマホやパソコンを使って簡単に手に入ります。それででしょうか、受診される患者さんの中には、とても物知りな患者さんもおられます。正直、タジタジ、です。
先日、ふらつくので診て欲しい、と言う患者さんが来られました。脳に病気があるのではないか?との不安からの受診でした。
ご本人は「身体に良い」とされる食材を積極的に食べておられるようでした。
ですが、なんとなく身体の肉付きが少ない印象を受けましたので、何か大きな病気はされていませんか?とお聞きしますと、胃癌で胃を全部とっているとのこと。
それで、毎日の食事についていろいろお話をお伺いしますと、頑張って食べてはいるけれど、消化不良になるのか気分が悪くなり下痢で出て行ってしまう、とのことでした。改めて、「食べること」は「吸収すること」ではない、という当たり前なことを思いました。
私たちの身体は、考えてみると(考えてみなくても)、生まれたときから食べてきたモノで作られています。これって恐ろしい事ですよね。
仮に、毎日カップ麺ばかり食べていると(そんなことは不可能でしょうが)、カップ麺の成分だけから私たちの肌も脳も内臓もできあがることになりますね。
筋肉も胃酸も、唾液までカップ麺成分で作られる事になります。
本当は腸内細菌がいますので、腸内細菌が何らか加工したモノを吸収することになるのですが、身体を構成する基本成分は食べているモノ由来、ということになります。
しかし、話はもう少し込み入ってて、実際は、食べたモノの中で吸収されたモノだけが身体を作る原料になります。吸収されなければ、外に出て行くだけですから。
と言うことは、腸の健康状態を示してくれる下痢や便秘は、私たちが日常よく経験するありふれた症状ですが、腸の吸収の状態に関係する、とても大切な症状、であることが分かります。
脳の病気ではないか?脳梗塞の前兆ではないか?と不安顔で受診される患者さんの中には、軟便が続いたことからくる脱水かもしれませんね、と説明しますと、
拍子抜けしたような表情でこちらを見返される患者さんもおられます。
ですが、私たちの身体を作っている原料は、毎日の食事を腸内細菌が加工したモノの中でも「吸収されたモノ」であることを考えますと、何を食べるか?便秘や下痢はないか?ということに、もっと関心を払った方が良いように思います。
大前 記(2020年10月9日)