10. 意識がなくなる(意識消失) … どんな場合?
この症状には、「気がついたら意識を失って(おり倒れて)いた」という症状と「気が遠くなる(遠くなっていく)」という症状の二つがあります。この二つは似ているようで異なりますので以下に分けて説明します。
10-1. 気がついたら意識を失っていた … どんな場合?
この症状が起きる原因には大きく二つが考えられます。一つは、脳に血液が<急に>行かなくなって脳の機能が<急に>落ちた場合(=停電してコンピューターに<急に>電気が行かなくなって<急に>止まってしまった時のようなものです)、もう一つは「てんかん発作」の発生で、脳に「てんかん波」という妨害電波が<急に>起きて意識が途切れた場合、です。一つめの、脳に血液が<急に>行かなくなる最大の原因は、心臓が短時間(数秒)だけですが停止したために(徐脈が高度の場合や不整脈の時に起きます)脳への血液供給が不十分になって意識を失う場合です。この場合、脳血管の狭窄(狭まっていること)があっても起きやすいのです。そのため、「意識がなくなる」という、脳に問題があるように見えていても、心臓や血圧、脳血管の狭窄、などの精査が必要になってきます。二つめの「てんかん」については、脳波検査が確定診断には必要ですが、脳波計を設置している医療機関は少ないので、「意識がなくなった」時の様子を細かく聞いて推定する場合もあります(しかし、脳波検査が確定診断には必要です)。高齢者に起きた場合、高齢発症の「てんかん発作」が原因の場合はあるのですが、心臓循環器系に原因のある場合が多いので、まずは心臓循環器系の診察検査が重要と考えます。当院にもこれらの訴えの方がよく来られます。
10-2. 気が遠くなる … どんな場合?
これは、たとえ一瞬と言えるごく短時間であっても<徐々に自分の意識が消えていく事を自覚している時の症状>を表しています。この症状の原因としては、脳の血液循環障害、睡眠障害、精神症状、まれなてんかん発作、などが挙げられます。最も多く日常よく出会う事の多い原因は、血圧の低下による脳血流の循環障害の場合で、具体的な起き方としては、起立性低血圧(立ちくらみ)や排便・排尿後に意識が遠のく場合や、不整脈が高度で意識消失にまでは至らない程度の脳循環障害が起きた場合、などです。しかし、非常に少ない経験ですが、睡眠障害(背景に睡眠薬の不適切な服用のある場合が多い)や、精神症状の一つとして、「気が遠くなる」事を訴えられる事もあります。