6. 身体がふらつく(倒れやすい) … どんな場合?
足腰の力が入りにくくて倒れ易い場合は、2-1や2-2をお読み下さい。ここでは、「バランスが取りにくい」ために「身体がふらつく・倒れやすい」場合について説明します。人間は、自分の身体のバランスを保つのには最低でも次の3つの情報が重要です。大雑把に書きますと、目で外界の中の自分の位置を把握すること、足の関節の角度で地面と自身との傾きの程度を把握すること、耳の奥にある内耳で重力に対してどのくらい身体が傾いているかを把握すること、この3つの把握をする事で自分の空間の中での位置が分かります。この中で、地面に対する自分の足の傾き角度の把握と重力に対する傾き角度の把握はよく似ているようで、異なります。鼻をつままれても分からない様な暗闇を歩く様な場合、身体が傾いている事に気づいても(重力に対する傾きを把握していても)、地面が坂になっている様な所では足の関節の感覚が鈍いと倒れてしまいます。夜中のおトイレで廊下で倒れてしまうのも同じ様な状態です。そして、これら3つの情報は小脳で処理されて身体のバランスを保っています。ですから、目が悪くなっても(合わない眼鏡で遠近が分かりにくい時)、足の関節の角度を把握する感覚神経が悪くなっても(正座の後の感覚がおかしくなった時)、内耳が悪くなっても(メニエール病など)、バランスを取りにくくなります。バランスを取れなくなった時には、これらを全てチェックしなければなりません。ところで、非常に稀な場合ですが、手足や身体に自分の意思とは無関係に出現する運動(不随意運動)や、身体が重く感じて思うように動かない様な場合にも、バランスが悪くて倒れやすくなる場合があります。この様に、これらの症状は耳鼻咽喉科の診療範囲でもあり当院の様に脳神経内科の診療領域でもあるのです。