14. 忘れやすい … どんな場合?
最近は、「認知症」の理解が社会で深まってきたからか、「物忘れ」を単に「老化による変化(加齢性変化)」として捉えずに「認知症」という病気の症状ではないか、という考えから、「認知症になっていないか?」の診断を求めて受診される方が増えてきた様に思います。
皆さんも経験されたことがあるのでは?と思うのですが、日常、なんらかの心配事や突然の喜び事があると「心ここにあらず」で思い間違いをしたり記憶違いをする事がよくあります。或いは、若い頃の記憶が鮮明なのは、「初めての経験」である場合が多い、と言う事なども関係しています。言い換えますと、初めて外国に行って新たに経験したことなどは、歳老いての経験であっても、明確に覚えている場合がよくあります。一方、脳機能の障害でなくとも、睡眠薬を常用されている方などで、睡眠薬の常用服用などによって十分に脳が起きていなくて(=いわゆる覚醒障害)、記憶に必要な集中力が低下していることで、記憶障害がおきている場合があります。その他にも、内分泌の病気で記憶障害が現れたり、昼夜逆転だと思っていたのが心不全が原因で起きた夜間呼吸困難によって夜間の睡
眠障害が引き起こされた場合もあります。
特に認知症の出現を危惧される方々は、心臓その他の臓器の機能低下を来していることの多い年齢層なので、「忘れやすい」という訴えが、本当に脳の機能の低下によるものかどうか、を丁寧に検討しなくてはなりません。ひょっとして、機能低下を来した、脳ではない他の臓器の障害の結果として、脳の機能が影響を受けているのではないか、という視点も絶えず持って、身体全体を丁寧に診る事が認知症の診察診断には非常に重要です。