3. 歩きにくい … どんな場合?
人間は二足歩行ですから、安定して歩くためには、1) 二つの脚(股関節から足首まで)と足(足首から先まで)の筋力が正常であること、2) 二つの脚と足の柔軟さに左右差がないこと(左右同等であること)、3) 二足で歩けるように身体全体のバランスをとれていること、の三つの要素が少なくとも安定していなければなりません。そして、1) が成立するためには、麻痺がないこと・筋力低下がないこと、が必要です。ところで、2) の左右の脚と足の柔軟さ”とは「こわばりの無さ”を意味しており、パーキンソン病などでは左右の足や脚の柔軟さに違いが出てきて(一方にこわばりが出現する、ということ)歩きにくさにつながっていきます。最後に、3) が成立するためには、ふわふわ「フラフラ”する感じ(浮遊感)がないこと・目がグルグルまわらないこと、が必要ですが(6,7,8,をお読み下さい)、それだけでなく、身体の軸が安定している、ということも必要です。
例えば、首や腰の背骨(頸椎や腰椎)が圧迫骨折などで変形しており、結果として背骨が歪んでいたら、歩く時に片一方に体重が過剰にかかることになって歩きにくくなってしまいます。神経の障害ではないのですが、当院ではそういう場合の歩きにくさの改善について、外来で幾つかの工夫を指導・説明していますし、改善を得ています。さて、上記の説明から分かるように、「歩きにくい」症状に対しては、麻痺,筋力低下,左右の脚と足の柔軟さ,脊椎の歪み、などについて診察が必要になります。しかし、それ以外にも足の関節の感覚(位置覚と言います)が障害を受けていても歩きにくさにつながりますから、フワフワ感やふらふら感の訴えがなくとも、足の関節の感覚についても診察を行っています。