11. しゃべりにくい(ろれつが回りにくい) … どんな場合?
「しゃべりにくい」という訴えには、舌が回らない(回りにくい)、という場合と、思うように言葉が出てこない、の二つの場合がありますが、思うように言葉が出てこない、という場合は「しゃべりにくい」という訴え方はされないのが普通ですから、この項では除外します。さて、舌が回りにくい(回らない)状態というのは、舌が思う様に動かない、ということを意味していると考えられます。脳梗塞や脳出血の後遺症としての運動障害などで、舌が思う様に動かなくなる場合がありますし、神経難病の中でも幾つかの病気には、舌を思うように動かせなくなる、と言う症状があります。そして、舌を思うように動かせなくなってくると、舌を思わず噛んでしまう、という症状もあわせて良く認めます。これは、舌の動きと口の開け閉めが巧く連動しないために舌を噛んでしまうのです。パーキンソン病になりますと、舌の動きが麻痺しているのではないのですが、思うように舌が動
かないので、しゃべりにくくなります。
ところで、しゃべりにくくという症状は、舌の動き・喉(のど)の動き・口の開閉の動き、それぞれの動きの連動が巧くいってない事の結果として起きる症状ですので、飲み込みくくなる症状(嚥下障害)があわせて出現する場合が多いので、嚥下障害についても診察・治療を行う必要のある事がよくあります。
嚥下障害は、誤嚥性肺炎や窒息を起こすことがあります。中には、しゃべりにくい患者さんで嚥下障害が見逃されている患者さんで、突然高熱になって、近くのお医者さんを受診したら誤嚥性肺炎になっていた、という場合がありますので、しゃべりにい症状を発声の問題、としてだけ考えるのは危険です。できるだけ早く受診して下さい。